年次有給休暇制度
年次有給休暇制度とは、
「労働者の疲労回復をさせ、働き続ける力を育て、ゆとりある生活の実現を手助けする制度」のこと。
年次有給休暇をどのように利用するかは、労働者の自由であり、*使用者の干渉は許さない。
*使用者・・・事業主または事業の経営担当者その他その事業の労働者に関することについて、事業主のために行為をする全てのもの
労働基準法上の要件を満たせば、“誰に対しても”その権利は発生する。
その要件とは、、、
①雇い入れた日から数えて6ヶ月間*継続勤務
②全労働日の8割以上の出勤
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10日間の年休権が発生(10労働日)
*継続勤務・・・「労働契約の存続期間(在籍期間)」をいう。 継続勤務しているかどうかは実際の勤務状態に従って判断される。
〜具体的には次のような場合〜
(原則として③と⑤以外は同じ使用者のもとで継続勤務を前提としている)
(派遣労働者の場合は派遣元との関係で判断する)
①私傷病などによって長期の休暇とされていた者が職場に復帰した場合
②臨時に雇用された者、パートなどを正職員に切り替えた場合
③*在籍型出向をした場合
④定年後に*嘱託社員として再雇用された場合
⑤解散した会社の権利義務の関係が新しい会社に一括して移転する場合
*在籍型出向・・・労働者を社員として籍を残しておいて他社で勤務させる労働形態のこと。
*嘱託社員・・・正規の社員ではなく短時間で働き、任された仕事行う者。
〜付与日数〜
雇い入れから数えて6ヶ月を超えて継続勤務する日(6ヶ月経過日)から数えて継続勤務の年数が1年ごとに新たな年次有給休暇の権利が発生する。
ただし、新たな付与日数は20労働日が限度。(これを超える日数を与えることは当事者の自由)
なお、翌年度まで繰り越すことができるため、繰越分を合わせると合計「40労働日」が法定の最多の付与日数になる。
■原則的な付与日数■
6ヶ月⇨10労働日
1年6ヶ月⇨11労働日
2年6ヶ月⇨12労働日
3年6ヶ月⇨14労働日
4年6ヶ月⇨16労働日
5年6ヶ月⇨18労働日
6年6ヶ月⇨20労働日
ポイント✍🏻
出勤率が8割未満の場合は、新たな年休権は発生しないが、その期間も継続勤務として取り扱う。そのため、その後の出勤率が8割以上に戻った場合は、継続勤務の年数に応じた付与日数の年休権が発生する。
【例】
雇い入れが4/1。 基準日の10/1まで継続勤務し、8割以上の出勤率だったため「10労働日」が発生。 その1年後も同じく要件を満たし基準日の10/1に「11労働日」が発生。 しかしその1年後は継続勤務したが出勤率が8割未満なため、新たな年休権は発生しなかった。 だがその1年後は継続勤務し8割以上の要件を満たしたため、基準日の10/1に「14日労働日」が発生した。
〜比例付与〜
パートタイムの労働者などに対しても要件を満たせば年休権は発生する。
ただし、公平性を保つために、*週所定労働日数に応じた通常よりも少ない日数とされている。これを「比例付与」という。
*週所定労働日数・・・あらかじめ就業規則や労働契約で定められている労働日数のこと
■比例付与の要件■
①週所定労働日数が「4日以下」(週以外の期間によって定められている時は、年間の所定労働日数が216日以下)
“かつ”
②週所定労働時間が「30時間未満」
ポイント✍🏻
⚫︎比例付与の対象になるかどうかは基準日における所定労働日数で判断する。
⚫︎基準日後の*年度の途中で所定労働日数などが変更された場合であっても、すでに発生している付与日数は増減しない。
*年度・・・4月1日〜翌年の3月31日まで
【例】
比例付与の対象になる?ならない?
①所定労働時間30時間・週4日勤務⇨ならない
②所定労働時間22時間・週4日勤務⇨なる
③所定労働時間19時間・週5日勤務⇨ならない
また、年次有給休暇は2年を経過した時から「時効によって消滅」する。 この時効は「基準日」から数える。 そのため、年次有給休暇は翌年度まで繰越しが認められるとされている。
【例】
「令和元年2月1日」の基準日に20日の年休権が発生した時は、この20日分は「令和3年1月31日」までの間、取得できる。 この20日分を全く取得していない時は、翌年度の令和2年2月1日から1年間は、繰越分を含んで最多の40日分の年休権の取得もできる。